悪人
僕は悪人である。そう信じたい。
考えている事は俗世的であり、極めて欲にまみれている。異性を見れば性交を、裕福そうなサラリーマンを見れば強盗を、食事処では暴食を思考の中空へと浮かばせる。欲しいものは過多であり、我が身にそぐわぬ物まで欲する始末。
されど果たして度胸はない。悪人たる行動は社会的に悪人である人が成してくれるのであり、僕自身が社会的評価を下げる必要はないと言い聞かせながら小心のままに生きるのである。
行為のみならば善人、それ故に人は僕を善人と呼ぶ。正しく行為は善人であり、それは僕の生き方として真っ当とも言える。
されど、心中は悪魔のような混沌をなしており、これこそが偽善なのだとと自嘲する。
自分の思うがままに生きられず、他者の評価を気にすることでしか生きられないのならば、やはり僕は悪人である。
ただ、そう信じたいだけなのだが。